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脱皮不全を起こしたヒョウモントカゲモドキ
脱皮不全を起こしてしまったヒョウモントカゲモドキさんですね。
爬虫類を飼われている方なら良く見る「脱皮」
これが正常に行われていれば、
脱皮後に皮が残ることはないんですが、
上手く脱皮できない子の場合
手や眼の中に脱皮片が残ってしまったりします。
脱皮片が残ってしまうと、
指先が締め付けられて壊死してしまったり
眼が開けられなくなって食事が取れなくなったりすることもあります。
残ってしまった脱皮片に対しては
お湯などでふやかしながら、ピンセットや綿棒で優しく剥がしてあげたり
生理食塩水などで洗い流してあげる必要があります。
また根本的には脱皮不全になってしまう原因があるため
脱皮のしやすい環境にしてあげたり
病的な原因を排除していく必要があります。
カメの嘴の異常(嘴過長)
カメの嘴の異常(嘴過長)について
カメは歯を持たず、代わりに「嘴」を持ちます。
嘴は普段伸び続けていますが、適切なかみ合わせによって
正常な形を保っています。
カメの嘴が異常になる原因として
物理的要因(外傷、繊維質の不足)
栄養的要因(ビタミンA欠乏、蛋白質過剰、栄養失調)
病気(肝疾患、口内炎、代謝性骨疾患)などがあげられます。
異常な嘴の治療としては
嘴の整形をするとともに
原因に対する対処も必要となります。
飼育管理の不備によっても起こることがありますので、
飼育に不安がある方は病院やペットショップなどで
しっかり飼育の仕方を指導してもらってください。
モルモットのダニ症(モルモットズツキダニ)
モルモットのダニ症(モルモットズツキダニ)
モルモットさんの毛全体に黒くて小さな動く物体が認められたので
顕微鏡で確認するとこれが見えました。
モルモットズツキダニと呼ばれるものですね。
痒みや脱毛を起こすこともある寄生虫です。
治療としては駆虫薬を使用したり、
環境を消毒したりする必要があります。
他にもモルモットさんには
ダニなどが付着することがあり、
ハジラミ類や疥癬などの報告があります。
程度の差はありますが、
症状としては、脱毛、皮膚炎、痒みなどが起こります。
治療方法は、駆虫薬と環境の消毒などになります。
もしお家のモルモットさんが痒がっていたり
脱毛してきたなどあるようであれば病院に連れて行ってあげてください。
エボシカメレオンの卵閉塞
この写真はエボシカメレオンの卵塞を呈したレントゲン画像であり、下腹部に見られるぼこぼこした白い塊状のものは全て卵です。
基本的にエボシカメレオンの産卵数は多く一回あたり20~80個ほど産卵しますが、それができないことによって腹部にたまった卵により消化管が圧迫され、食欲不振、腹部膨満が見られます。
原因としては、産卵行動の前に行う掘る行動を満足にさせるだけの土がない場合や、紫外線不足、低気温などの飼育環境の問題や、カルシウム不足などの食餌の栄養の偏りなどがあげられます。
内科的治療としては、カルシウム不足による機能的卵塞を考慮し、カルシウム剤の投与や、卵管収縮作用があるオキシトシンの投与などがあげられますが、一般状態が低下している場合は内科療法よりも、外科的に摘出するほうが良い結果につながる場合もあります。
セキセイインコの精巣腫瘍
写真のように精巣腫瘍を呈してしまいますと腫瘍から女性ホルモンが多く分泌され、雄であるにもかかわらず、ロウ膜が角化亢進し茶色くなり、その他、太りやすくなったり、飛ぼうとしてもすぐに落ちたりすることもあります。
状態が進行すると、大きくなった腫瘍が消化管を圧迫し、食欲低下、吐き、便が出ないなどの、消化器疾患が見られたり、腹水が溜まり腹部膨満がみられ、肺を圧迫し呼吸困難になる場合などがあります。
治療としては、発情抑制剤を使用し、女性ホルモンの分泌を抑制します。
早期であれば精巣腫瘍を摘出することで完治が望めますが、リスクが高く、現在のところ実施されることはほとんどありません。
ハリネズミの神経症状に対するMRI検査の有用性
神経症状を呈し、ふらつき症候群(WHS)を疑うハリネズミに対し無麻酔下でのMRI検査を実施した二症例について、2018年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。
脳炎および脳腫瘍を強く疑う所見を今回実施したMRI検査により得られたため、様々な神経症状に対して生前診断が可能となる事が判明した。
ハリネズミでのMRI検査の報告は未だなく、適正なデータはまだ存在しない。
今後はデータの蓄積や不動化状態での撮影、さらに造影剤を用いた撮影を行う事により精度の高い診断を行う事が課題であると言える。
爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性
卵胞鬱滞を呈している爬虫類(ミシシッピアカミミガメの一症例およびサバンナモニターの一症例)に対して、酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン)を用いて治療を行う機会を得たため、2017年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。
爬虫類における生殖器疾患は比較的多く、中でも卵塞性が問題になりやすい。卵胞鬱滞は発生機序が明確になってはおらず、外科的な卵巣・卵管摘出術が主な治療法であり、内科的な治療法はいまだ確立されていない。
今後も症例の蓄積を行い、安全域の決定や投与間隔、有効な症例の見極め、使用法の多様化等が課題となる。
フトアゴヒゲトカゲの全身性微胞子虫症
この症例は2016年にエキゾチックペット研究会にて症例発表を行ったものである。全身性微胞子虫症とは診断方法が確立されておらず、生前診断が困難な疾患であるが、おそらくEncephalitozoon sppが関与していると思われる。報告では副腎や肝臓、腸管、脂肪組織における感染も確認されており、症状が多様化しやすく、発見は困難であろう。
モルモットの食滞
下の写真は食欲不振を呈したモルモットのレントゲン写真です。
胃や腸がガスにより拡張していることが分かります。
春と秋の気温が変動する時期の換毛期に多くみられ、症状としては急に食欲がなくなりあまり動かなくなる、ウンチが出ないといった症状を示します。
原因としては、千差万別であり、毛球だけでなく急激な気温の変化や台風など異常気象、食滞とはまた別の病気や異常によるストレスによっても、食滞を引き起こす原因となります。
重篤度においては症状によってはすぐに回復する軽いものから数日の放置で亡くなることもある位重篤なものまで、幅が広いため、早めの診察や治療をお勧めします。
消化管の状態により、輸液や消化管の機能を改善する薬や食欲増進剤の投与など行いますが、消化管が完全に詰まっている場合は、痛みによるショック死も考えられますので、鎮痛剤の投与を行う場合があります。